


素材を活かすということ。人間は、その方法論のすべてを言葉や数値で伝える術を知りません。
最近になって、名器といわれるバイオリンは、奏でられるたびに、木の繊維が一定の方向を向いていくということが、科学的に証明されました。しかし、なぜ、そうなるのか、そうした加工を施すことができたのかということに関しては、未だ謎のままです。
どんなに優れたコンピュータも、言葉や数値に置き換えることができなければ、そのレベルの仕事をすることはできません。今日のようにコンピュータ万能の時代になっても、私たちは、やはり、熟練の技能職の手業に頼るしかないという部分があるのです。

大修理が行われた唐招提寺金堂では、1200年の間、いくつかの大震災に見舞われながらも,倒壊を免れてきた建物でもあります。
金堂は、大人の力であれば、たったひとりの力でも、あの巨体を揺るがすことができる、そういう構造になっています。いくつかの部材が組木されている「固定しない構造」だからだと言われていますが、このことによって、どの方向から地震波が来ても、そのエネルギーを揺れながら逃がしてしまうという免震の構造が担保されています。
なぜ、1200年も昔に、こうした構造を発想し、設計できたのか…これも、現在、まだ解明されていないことのひとつです。
もちろん、すべての伝統技法が、先端の工学技術を超えているわけではありませんが、大工仕事が、しばしば理論を超えた「正解」を出す事も事実です。
私たちは、そうしたことを大切にしながら、伝統技法に拠る大工仕事を真摯に見つめ、仕事に取り組んでいきたいと考えています。
>> 職人さんの眼/先端の科学